タグライン・ブルース:ここは何のサイト?

Webサイトのタグラインは、その企業が何を行っていて、競合他社とどこが違うのかがわかるようなものでなくてはならない。タグラインを評価するにあたっては、以下の2つの質問が有効だ。競合他社にもそのまま適用できるだろうか? 正反対の主張をするような会社があるだろうか?

デザインの優れたB2Cサイトなら、扱っている製品とサービスの内容を簡単に説明できる。実際にユーザがオンラインで読んでくれるくらい簡潔なテキストで表現できるのだ。例えば、AutoTrader.comはこう言っている。「インターネットで最大の在庫からクルマとトラックを検索。登録数150万件以上。毎日更新」これだけの情報があれば、このサイトが何のサイトか、ほとんどの人に理解してもらえる。

B2Bサイトが扱っている製品やサービスは、B2Cに比べてはるかに複雑で日常体験との関連性も薄いものが多い。このため、B2Bにおいては、ウェブサイトの目的を要約するのもかなり難しいことになる。このために、コピーライターに大枚をはたくことになるわけだ。少なくとも、そう考えるのが自然だ。ところが、よく調べてみると、ほとんどのサイトでは、コピーライターにサイトの目的をはっきり伝えてもらうのではなく、むしろあいまいにしてもらっているように思える。

あいまい化の実際

以下に4つのウェブサイトのタグラインを掲げる。Angara、Calico、CSG Systems、E.piphanyの4サイトである。

  • オンライン顧客の創造
  • 先進企業のためのeビジネス:eビジネス販売のキー要素が思いのままに
  • (企業名)でコンバージェンスのパワーをフル活用
  • 顧客経済のためのソフトウェア:次世代CRMソフト

これらのタグラインを、企業名と結び付けられるだろうか?どの企業が何をしているか見分けがつくだろうか?何か違いがあるのだろうか?そもそもあなたは関心を持つだろうか?

最初の質問に関して: 各タグラインは、直前に示した企業名の順に並んでいる。だが、もうおわかりいただけたことと思うが、ここで重要なのは、これらタグラインが基本的には内容のない単語の羅列に過ぎないということだ。単にホームページをゴチャゴチャさせる役にしか立っていない。

(半分)修正済み

上記タグラインを集めたのは数ヶ月前のことだ。このコラムを書くにあたって、各サイトを再訪してみたところ、CSG Systemsでは「コンバージェンスのパワーをフル活用」というタグラインを外していた。賢明にも、現在同社では実際に売っているものは何かを伝えようとしている:「顧客ケアと課金ソリューション」。より限定的になっているから、製品を探してホームページを訪れたストレスいっぱいのビジネスエグゼクティブの目にも止まりやすい。

CSG Systemsの新しいウェブサイトは、実際、いくつか正しいことをやっている。ホームページはかなりシンプルだ。ただし、Flashアニメーションがうるさいので、訪問者の注意がそがれてしまうだろう。メインのテキストは、私が提唱するオンラインコンテンツのためのガイドラインにそって書かれているようだ。簡潔なパラグラフ、流し読みに適したレイアウト、それに箇条書きといったポイントを満たしている。

私たちのご提供するソリューションは…

  • スケーラブルかつ頑強
  • モジュール型かつ統合的
  • 効率的かつ低コスト

残念ながら、この文面を読んでおわかりのとおり、同社はコピーライターを雇って、わざわざ見込み客とコミュニケートさせないようにしているみたいだ。この「ソリューション」が頑強、統合的、効率的で、低コストであるという点に注意。何に対して?バグだらけで分散的で、非効率で、高コストな製品に対して?そんな製品を宣伝するウェブサイトはありえないから、主張を反転させると情報価値がゼロということがわかる。

タグラインのガイドライン

ユーザは、そのサイトにとどまるか、立ち去るかをあっという間に決めてしまう。あなたのホームページは、最初の決定的な10秒間で訪問者と効果的なコミュニケーションを持てるだろうか。これを見分けるために、以下2点のシンプルなガイドラインに従おう。

  • まず、自分のサイト、および主な競合他社3社のタグラインを集める。企業名を隠して、これを箇条書きの形で印刷する。どの企業が何をやっているか見分けられるか、自問してみよう。社外の人間5人ほどに同じ質問をしてみることは、さらに重要だ。
  • 次に、ホームページのメインコピーで自社をどう紹介しているか見てみよう。テキストを書き換えて、正反対の内容にしてみる。そんなことを言う企業があるだろうか?もしなければ、元のコピーにもたいした内容はないということになる。

ベンダーの候補リストを作ろうと思ってホームページを見ていると、トレードショーの会場を歩き回っているようなフラストレーションを感じる。最近参加したイントラネット関連のカンファレンスでは、少なくとも20種類の検索エンジン提供者がブースを構えていた。各社にどんな違いがあるのか、私には見分けがつかなかった。誰が何をやっているのか?このテクノロジーはどんなタイプの問題に適しているのか?どの製品がどのプロジェクトの予算にぴったりなのか?これらブース群のデザインは、つまるところ行き当たりばったりだった。明らかに多額の資金が投じられているにもかかわらず、あわただしく通路を行き来する疲れきったトレードショー訪問客に対して、これらのブースは、記憶に残るようなものを何も伝えられていない。

ホームページを、トレードショーのブースになぞらえてみよう。あるブースには立ち止まるけれど、それ以外は飛ばしたりするのはどうしてなのだろう?もちろん、奇術師の生出演なんていう手は、ホームページでは通用しない。何ができるのか、ユーザの注目に値するのはなぜなのかをはっきり伝えること。これ以外に道はない。

2001年7月22日